それから〜これから。

それからについて

明治の文明開化が父の世代を富裕な資産の持ち主に膨張させ、おかげで代助は息子として父親からの送金で父親を侮るほどの教養を身につけ、なおも父親の資産に寄生して遊民の生活をしている。代助が鋭敏な生活倫理に目覚めなければこの安穏な生活はつづき、しかるべき富裕の家柄の娘をめとって、富裕の末席くらいに生涯をおくことは手やすくでいただろう。(吉本隆明『言語にとって美とは何か 1』253p)

自らが正当ではないことを知っている人間の正しさ、という幻想がこの主人公を捕らえて、彼をnill admirariの中に惑溺させる......。「それから」の主題は、代助がこの種の幻想から急転直下にすべり落ちる所に発見させるべきである。
江藤淳『決定版 夏目漱石』99p)

「おかげで代助は息子として父親からの送金で父親を侮るほどの教養を身につけ、なおも父親の資産に寄生して遊民の生活をしている」、「自らが正当ではないことを知っている人間の正しさ、という幻想」...


そして、これから...