2011-02-01から1ヶ月間の記事一覧

経路

キルケゴールにいわせれば、“他者”のないところで、自己自身たらんとすることが「死に至る病」である。(柄谷行人『転回のための八章 4』) フロイトの精神分析は、“共通の本質”の如き規則を想定してしまうユングのそれとはちがって、患者と医者の対話関係、…

それから〜これから。

それからについて 明治の文明開化が父の世代を富裕な資産の持ち主に膨張させ、おかげで代助は息子として父親からの送金で父親を侮るほどの教養を身につけ、なおも父親の資産に寄生して遊民の生活をしている。代助が鋭敏な生活倫理に目覚めなければこの安穏な…

草枕

草枕について。 彼は只、自らの憧憬する世界を出来るだけけんらんと描き、その存在を確かめようとしただけの話である。 (江藤淳『決定版 夏目漱石』83p) この作品のやや安価なイリュージョンを展開して漱石の得たものは、極めて高価なディスイリュージョン…

「罪を赦すというこの一事においては、人間は永遠に神に等しいものとなれないのである。かくしてここに、つまづきの極度の集中がある。それは、ほかならぬ神とのあいだの同一性を教えた教説が必要と考えたものである」 (キルケゴール『死に至る病』225〜226…

ノー・カントリー/コーエン兄弟・・・4

「人間ってのはな、奪われたものを取り戻そうとして更に失う。結局は出血を止めるしかない。俺は自分から保安官補になったんだ」 数秒の沈黙。 「お前は辞職するらしいが、なぜそんな気に?」 「俺では...力が足りない。自分が年を取ったら、神が、人生に入…

ノー・カントリー/コーエン兄弟・・・3

「近くに空港は?」 「空港か?飛行場かね?」 「空港だ」 「行き先はどこだ?」 「分からない」 「この土地を出たいだけか?気持ちは分かる」

ノー・カントリー/コーエン兄弟・・・2

「聞くがね」 「アメリカに入国できるのは誰だ?」 「さあ...アメリカ人か?」 「その中の“ある者”だ。誰が決める?」 「あんただ」 「その通り。どう決める?」 「さあ」 「質問する」 「ちゃんとした返答じゃないと通さない。分からないことは?」 「ない」

ノー・カントリー/コーエン兄弟・・・1

「奴は何者だ?究極の悪党か?」 「それは違うな」 「じゃあ何だ?」 「そうだな彼は...ユーモアを持たない男」

精神分析

精神分析には興味がなかった。 平たくいえば、ラカンは、フロイトがエディプス・コンプレックスと呼んでいるものを、幼児が言語を獲得する過程においてとらえなおしている。*1 平たく言って頂いてありがとうございます。 そして、フロイトがナルシズムと呼ん…

語り

初めから「謎」は存在しない。語りえぬものなどない。ただ、語りたくない。 「語れない」と語ることによって、語りたくないと思わせる社会が浮かび上がろうと、 それは人々にとって自明な「現実」に過ぎない。 故に初めから「謎」は存在しない。

問い

学校とは何か、仕事とは何か、結婚とは何か、といった問いに僕は遭遇していない。 生きるとは?愛とは?といった哲学的な問いも同様に。 それらの問いは社会参加当事者が「切実」に、あるいは「何となく」遭遇するのだろうか。 または、口にしてしまうのだろ…

当事者

働けと言わないワーキングマガジン『フリーターズ・フリー』の2号の巻頭言には次のように書かれている。 わたしたちも拘ったいわば『当事者の視点』を持つ雑誌*1 社会に参加できないだろうという意識のあった僕には「当事者の視点」から書かれた言葉の全てが…

罪と罰

もしも罰を受けるのなら、相応の罪を犯したい。それが社会参加なら、どんな罪を犯せば良いのだろうか...

ぼく

大分前に読んだ内田樹さんの『日本辺境論』に良い文章があったのを思い出す。 「ぼく」は社会的には中位にあり、それほど学知や教養があるわけではなく、狂信的なイデオロギーや信教に縛り付けられているわけでもなく、それゆえ読者に対して高飛車に出たり、…

最良の教育

ある集まりで、人間は6歳までに体感寿命の75%を経験する、というお話を聞いた*1。話を聞きながら、『カラマーゾフの兄弟』の終わりの方で、子ども時代が一番素晴らしい、というようなことが書いてあったのをボンヤリ思い出した。 新潮文庫版の下巻を取り出し…